作業工程と技法
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作業工程小鹿田焼の技法陶土の採集と精製成型と装飾の技法
作業工程
採集〜粉砕   水簸  
[採集〜粉砕]
土採り場から里へ運ばれた陶土は、10日位乾燥させて唐臼でつき粉末にする。
[水簸]
臼でつかれた陶土を右側の細長い水槽に入れ、十分に水に溶けた泥漿のゴミを取り除き、中央の水槽に移す。泥土が沈殿し水槽がいっぱいになるまで繰り返す。
水抜き   乾燥
[水抜き]
陶土は水抜き台(おろ)で水分を除き、手ですくえる位まで水分を抜く。
[乾燥]
水抜きされた陶土は、素焼き鉢に入れたり、乾燥窯に乗せて乾燥させる。この間の工程で1ヶ月位かかる。
土練り  
成型
[土練り〜成型]
長い工程を経て成熟させた原土は、やきものの陶土となって工人の手に託され、さらに練られて成形される。
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小鹿田焼の技法

小鹿田焼と聞いて、まず頭に浮かぶのは、「飛び鉋」あるいは、菊の花びらを思わせる「打ち刷毛目」の模様であろう。
小鹿田焼には、そのほかにも「指描き」「櫛描き」「打ち掛け」「流し掛け」等の装飾技法がある。江戸中期から続いてきた装飾技法としては、飴釉や黒釉を単味で全体に施したものがほとんどであるが、意識的に複数の釉薬によって装飾されたものとしては、特に「打ち掛け」と「流し掛け」をあげることができる。
大正末期から昭和初期にかけてこの地で行われ始めた「飛び鉋」と「打ち刷毛目」の技法はその後普及し、小鹿田焼を代表する意匠になった。今では、小石原焼にまで波及し、同じ模様のものが作られている。

 
飛び鉋「飛び鉋」
甕や壺の胴部、皿の内面に施された、帯状のリズミカルな模様である。
蹴轆轤上で回転する器物に湾曲し先のとがった鋼片を当て、当て方によって生じる鋼のバウンドによって器物の表面に刻みを入れる。
中国の宋の時代や薩摩の龍門司窯の一部に見られるが、その他に該当する物は見られない。
主に壺類に施される。
  打ち刷毛目「打ち刷毛目」
甕や壺の胴部、皿の内面に施された、帯状や花びらを思わせるリズミカルな模様である。
半乾きの素地の上にたっぷりと白土を塗り、それが固まる前に刷毛を当てて模様を表すが、轆轤の回転と刷毛の当て方の強弱により濃淡の模様が表れる。
主に大皿をはじめ、皿類に施される。
打ち掛け「打ち掛け」
釉薬を入れた柄杓を用いて、軽く水をまくような動作で器物に掛ける。
半月状の模様が生じ、即興的な面白さがある。
数種の釉薬を別々に壺のあちこちに打ち掛ける事もあり、単純な模様でありながら、変化も楽しめる。
主として茶壺類に装飾されるが、他の技法と併せて一部に施されることが多い。
  流し掛け「流し掛け」
スポイドや先の細い柄杓に入れた釉薬を、長めの線上に流して表した模様。
蓋付きの壺や半胴の甕類に多く施されているが、連続した線の集積はシンプルでありながら、直線から受ける快い強さを感じる。
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陶土の採集と精製
陶土の採集  
高火度の焼き物を作る陶土は、通常1200℃〜1300℃位までの焼成に絶えられる耐火度と伸ばしたり縮めたりできる可逆性を備えた粘土を使用する。

この皿鹿田皿山には、集落を囲む周囲の山際に豊富な陶土の層がある。
この小鹿田の土の性質は、きめが細かく、耐火度はやや低く、腰が強く粘りもあるが、伸ばしにくい難点がある。鉄分をかなり含む為、焼成後黒味を帯びる。

唐臼による粉砕

採集した土は各窯元の小屋に運び、十日前後乾燥させ、唐臼で打たせ粉末にする。
唐臼での飛散防止の為、少し湿気が残った状態で唐臼にかけて約十日間打たせ続ける。
年中休み無く働く唐臼で搗かせた陶土の二ヶ月分が、窯元一軒の一窯分の製品を造る料である。

かつて、バーナード・リーチが世界に二ヶ所しかない(小石原を入れる)と驚愕したこの唐臼は、小石原での唐臼が減少し僅かした使われていない現在において、まして全戸が唐臼のみで土作りをするという集落ということであれば、世界でここ小鹿田皿山だけであるといってよい。

また、小鹿田の全ての窯元により、唐臼によって搗かれた土のみを使用する取り決めがなされており、このことによって唐臼は小鹿田皿山の伝統的製作工程を左右する元雄も重要な要素になっている。

水簸と水抜き

唐臼で細かく粉砕された陶土は、精製用の水槽に入れ、水簸を行う。
はじめに細長い水槽にいれ、充分水に溶け込むようにして泥水にし、時々攪拌する。
充分に攪拌された泥漿は中舟の両側の水槽に移される。

水に溶けなかった砂粒や上部に浮かんだゴミなどが取り除かれ、中部のコロイド状になった泥水だけを外の船に分別するのである。
この作業を繰り返し、泥漿と水分を抜けば、陶土として使用できる状態になるのである。
ゴミや砂を除いてきれいになった泥漿は、「おろ」と呼ばれる水抜き台に大きな柄杓で移される。この台は、水分のみ下に浸透するような工夫がされている。
手ですくえる程度まで水分が抜けた粘土を乾燥用の素焼き鉢や乾燥窯に入れる。この素焼き鉢で、成型に適した硬さになるまで放置する。
こうして長い工程で出来た粘土は、長時間熟成させたことと同じ効果があり、十分に粘りが出て、可逆性が増す。

この製法は全国同じであるが、ほとんどの所が機械を導入しており、一部の作業を除き、このような手仕事のみで行っている所はごく小規模の個人を除き、集団では他に無い。
ここまでの工程で約一ヵ月かかり、一窯分の土を用意するには二ヵ月を要する。
この様にして仕上げられた陶土は、轆轤成型作業場の隅に積み上げられて色々な形に作られていく。

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成型と装飾の技法
土練り  
轆轤で形成する前に土練をする。練り方は通常二種類ある。一つは土の硬さや成分を均一にする為の練り方であり、他方は土の中に閉じ込められた空気をなくす「菊練り」と呼ばれる練り方である。これは、練る途中の土の形が利くの花に似ていることからつけられたと言われている。
引き作り

菊練で練り上げた陶土の塊を轆轤の盤上に据え、両手で叩いてしっかりと盤にくっつけ、山形に形を整えて作り始める。轆轤で作ることを、轆轤で引くという。小鹿田の土はきめが細かく、収縮性も高い為割れやすく、この方法では特に土を締めにくい底部がよく割れる。以前は苦労していたが、改善のために導入されたのが「玉作り技法」である。

玉作り

この技法は昭和三十年以降小鹿田皿山で普及した。これは一つ分の土をあらかじめ団子にし、一番弱い底部になる部分が十分しまる様に上げさげを行った後水引する。

紐作り〜練り付け〜

この技法は電動機械轆轤では難しく、まさに蹴轆轤ならではの技である。特に大皿、大壺の製作には相当の熟練を要する。陶工全員がこの技を使いこなしている小鹿田皿山は実に見事と言うほか無い。
ます、壺などの底部になる部分を十分いに叩き締める。次に粘土を太い紐状にし、左手に練りつけるように圧迫しつつある高さまで積み上げる。ネルなどの布を用いて成型する。

削り上げと取っ手付け

轆轤で成型した器は、一〜三日程度天日や陰干しで乾燥させる。半乾きの状態のとき、底部を削り、高台を作り出す。水差しやコーヒーカップなどのように取っ手の必要な物には、高台を削り出した直後に取っ手を付ける。接合部に水や泥漿を塗り、くっつける。

指描き

これは素地に白化粧を施した直後に素早く指で描く技法であり、古くから九州各地にある。特別な道具を用いず、文字通り指で描くのであるが、やり直しがきかず、一気に行うため確かな構成力と機転が必要である。

櫛描き

素地に直接又は白化粧した上から、手製の、短い櫛状の道具を用いて描くが、器を静止させたまま櫛を筆のように使用する方法と、轆轤で回転させながら櫛を揺らすように動かすだけで描く方法がある。素地がやや硬めの半乾きの時に行う。

参考資料:芸艸堂刊『小鹿田焼すこやかな民陶の美』より抜粋
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